「取り急ぎ」は手紙で使用されていた言葉ですが、現在ではメールでも多用されます。
「取り急ぎご連絡まで」や「取り急ぎお礼まで」のように使用されますが、正しい使い方なのでしょうか?
この記事では「取り急ぎ」の意味を解説して、目上の方に使っても失礼にあたらないのか解説します。
また、正しい使い方や例文、無礼にならない言い換え表現も紹介しています。
この記事を読んで、安心して「取り急ぎ」を使いこなせるようになりましょう。
取り急ぎの意味「とりあえず急いで」
「取り急ぎ」の意味は「とりあえず急いで」です。
「急いで」の意味は言うまでもありませんが、「とりあえず」の意味をもう少し深掘ります。
「とりあえず」は、「本格的な対応はあとにして、今できる緊急事を最優先させるさま」です。(出典:明鏡国語辞典 携帯版)
「とりあえず」は以下のような言い換えができます。
- ほかはさしおいて
- まず第一に
- なにはさておき
- 完全ではないが
- 十分ではないが
まとめると、「取り急ぎ」は「急いで」を強めた表現で、本格的な対応の前に急いで対応しているときに使える表現だということです。
取り急ぎを目上の方に使うと失礼になるのか
「取り急ぎ」を目上の方に使用した場合、失礼になる場合とならない場合があります。
「連絡を急ぐ」という心がけ自体は歓迎されるのですが、使用する状況が重要です。
失礼になりがちなケースには以下の4つがあります。
- 返信までに時間を要した場合に使用する
- お礼やお詫びのメールで使用する(失礼にならない場合もある)
- 「取り急ぎ~まで」と省略する
- 後で追加で連絡しないのに使用する
それぞれ失礼になる理由やNGな使い方について詳しく解説します。
取り急ぎの注意点・NG例
返信までに時間を要した場合は使用してはいけない
返信までに数日経過しているのに「取り急ぎ」を使用すると相手に違和感を生じさせてしまいます。
「取り急ぎ」は「急いで」を強めた表現なので、急いで返信していると感じないメールで使用してはいけません。
重要なのは自分自身の急いでいる気持ちの強さではなく、客観的に急いでいると感じるかどうかです。
たとえばトラブル発生時の報告に使用する場合でも、トラブル発生から数日経ったメールに使用すると違和感を感じさせる可能性があります。
お礼やお詫びのメールでは慎重に使用する
「取り急ぎ」をお礼やお詫びのメールで使用すると失礼になる場合があります。
なぜなら、お礼やお詫びを簡単に済ませていると感じさせる可能性があるからです。
「取り急ぎ」は「追って連絡する」と同時に使用されることが多いことを考慮すると、「丁寧なお礼・お詫びのメールは後で連絡する予定です」と伝えているようなものです。
とはいえ、「早くお礼やお詫びを伝えたい」という思いはむしろ歓迎されます。
注意するべきは、「丁寧さが足りない」と思われないようにすることです。
「取り急ぎ」とわざわざ書くのではなく、メールの送信時刻の早さで「取り急ぎ」のニュアンスを伝えるようにしましょう。
目上の方に使う場合は「取り急ぎ~まで」と省略しない
目上の方に使用する場合は、「取り急ぎご連絡まで」「取り急ぎお礼まで」のように省略しないようにしましょう。
失礼だと感じない方もいますが、丁寧さが欠けていると感じさせる要因は排除した方がベターです。
省略するのではなく、「取り急ぎご報告のみで失礼いたします」のように丁寧な表現に置き換えてみてください。
後日、追加で連絡しないようなメールには使わない
「取り急ぎ」は「本格的な対応はあとにして急ぎで」という意味です。
よって、そのメールで完結する内容に「取り急ぎ」を使用してはいけません。
また、「取り急ぎ」を使用した以上、追加連絡が求められます。
たとえば、重大なミスが起こって上司に連絡するとします。
そのメールでは、重大なミスが起こった経緯や現在の状況を「取り急ぎ」伝える内容になることでしょう。
後日ミスの原因や対応策を考え、自ら上司と共有するはずですが、その本格的な対応のメールがないとビジネスマナーとしてふさわしくない行為になってしまうのです。
取り急ぎの正しい使い方と例文
「取り急ぎ」の正しい使い方は、本当に急いでいる内容のメールに使うことで、「追って連絡する」とセットで使うと覚えると使いやすくなります。
「取り急ぎ」の正しい使い方の例文を紹介します。
- 取り急ぎのご連絡でした
- 取り急ぎの確認メールでした
- 表題の件について取り急ぎご連絡差し上げました
- 取り急ぎ、日程変更についてご案内申し上げます
- 取り急ぎメールにて失礼いたします
そして、「取り急ぎ」を使用した際、重要になるのが本格的な対応のメールを後日送信することです。
「急いで連絡している」という誠意を見せるために多用する方もいますが、本来の意味を考えると正しい使い方とはいえません。
早く連絡したことを伝えたいのであれば、別の表現を使うことをおすすめします。
取り急ぎの丁寧な言い換え表現
取り急ぎの言い換え表現は以下の4つがあります。
- ~のみで失礼いたします
- まずは
- 一旦
- 略儀ながら
言い換え表現とはいえ、ニュアンスが若干異なる表現もあるため、それぞれ詳しく解説します。
~のみで失礼いたします
「取り急ぎご報告まで」は「ご報告のみで失礼いたします」に言い換えられます。
特徴は、急いでいない内容や返信に時間を要した場合でも使用できることです。
「急いでいる」というニュアンスは弱く、「本格的な対応はあとにして」のニュアンスが強い表現です。
「(他にもするべきことはあると分かっているが、このメールでは)~のみで失礼します」のようなイメージを持ってください。
「取り急ぎご報告まで」のような省略表現よりは丁寧な印象を持たれます。
まずは
「取り急ぎご報告いたしました」は「まずはご報告のメールを差し上げました」に言い換えられます。
取り組むべき事項の中で最優先にこのメールを送っているというニュアンスで使用できます。
「まずは」なので、「次は」もあることに注意してください。
「取り急ぎ」と同じく、追加の連絡が必要な内容に使うようにしましょう。
一旦
「一旦」は「取り急ぎ」より急いでいるというニュアンスは弱くなりますが、ほぼ同義で言い換えられます。
- 一旦、ご報告した次第でございます。
- 一旦、日程調整のご連絡をいたしました。
- 一旦、簡潔な資料のみ送付いたします。
「ひとまず」や「一時的に」と言い換えられる「取り急ぎ」は「一旦」に置き換えても問題ありません。
ただ、軽いイメージを抱かせる場合もあるため、お礼やお詫びでは使用しないようにしましょう。
「まずは」や「一旦」は、前述の「~のみで失礼いたします」と組み合わせられます。
- まずはご報告のみで失礼いたします。
- 一旦、メールのみで失礼いたします
略儀ながら
「略儀ながら」は「取り急ぎ」の言い換え表現として使用できますが、「とりあえず」「急いで」というニュアンスが弱く、「取り急ぎ」と同義ではないことに注意してください。
「略儀ながら」は手続きの省略の際によく使用されます。
たとえば、「お礼やお詫びは面と向かって伝えるべきだが、メールで手続きを省略して失礼します」のような使われ方です。
つまり、お礼やお詫びの場合は「取り急ぎ」よりも「略儀ながら」の方が適している場合があるということです。
- 略儀ながらメールにて御礼申し上げます。
- 略儀ではございますが、メールにてお詫び申し上げます。
- 略儀ながら書中にてご報告いたします。
より申し訳なさを伝えたい場合は、「“甚だ”略儀ではございますが~」のように「甚だ」を付けてみてください。
取り急ぎでよくある質問
「取り急ぎご連絡まで」のようにメールの文末に省略して付けていいの?
相手によります。
目上の方や社外の方にメールを送る場合、文末に省略して付けることは避けた方がよいでしょう。
考えられる言い換え表現は以下の通りです。
- 取り急ぎご連絡のみで失礼いたします。
- 一旦ご連絡を差し上げました。
- ご報告のみで失礼いたします
取り急ぎはいつ使う?
緊急の連絡が必要で、本格的な対応が残されている場合に使用します。
「とりあえず」「急いで」という意味なので、そのメールだけでは完結しない内容に使ってください。
迷った際は「まず第一に」や「完全ではありませんが」と言い換えられるか考えてみるのもよいでしょう。
取り急ぎとはどのくらい?
「取り急ぎ」は基本的に当日中、遅くてもその次の日までの連絡で使用するとよいでしょう。
たとえば、当日中の返信やトラブルが起こった当日の連絡などです。
返信が早ければ早いほど適しており、遅ければ遅いほど使用したときの違和感が大きくなります。
急いでいるときに使用する表現のため、全てのメールに頻繁に使用する表現ではないと覚えておいてください。
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社内のチャットやメールで「取り急ぎ」を使用すると固い印象を与える場合があります。
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まとめ:「取り急ぎ」は急ぎで連絡したことを伝えるときに使いましょう
「取り急ぎ」は、「本格的な対応はあとにして、今できる緊急事を最優先させて急ぎで」という意味です。
つまり、急ぎの用件や追加での連絡が必要な場合に使用できるということです。
とはいえ、急いで連絡したことを伝える目的だけでも使用されます。
全ての文面に使用するのではなく、「急ぎで連絡したこと」を強調したい場合に使用するようにしましょう。
「取り急ぎ」を使いこなして、できるビジネスマンの印象を与えられるようにしましょう。