オンライン展示会プラットフォームとは、企業が商品・サービスの発表を行い顧客を開拓するための場である「展示会」をインターネット上で提供するサービスです。
対面が前提だった展示会をオンラインで行うのは比較的新しい試みですが、物理的制約を受けないオンライン開催のメリットが評価され、利用が広まっています。
昨今では多様なニーズに応えるオンライン展示会プラットフォームが続々と登場し、気軽に出展できる身近なものとして認知されるようになりました。
オンライン展示会が注目される理由
新型コロナウイルス感染拡大により、大規模イベントは開催中止を余儀なくされました。
対面営業がWeb会議に移行する流れの中、リアル展示会に代わるものとして脚光を浴びたのがオンライン展示会です。
オンライン展示会のメリットは、感染リスクを抑えることだけではありません。
主催者や出展企業にとっては開催コストが大幅に削減できるうえに、来場者の参加コストも不要。インターネット環境さえあれば参加できる手軽さから集客の幅も広げる結果となりました。
今日ではCGやVRなどのテクノロジーにより、リアルに近い体験を提供することも可能になっています。
また、リモートワークの浸透や、企業の情報収集がオンラインに移行しつつあることも、オンライン展示会の導入を後押しする形となりました。
オンライン展示会は、イベント自粛中の代替手段にとどまらず、オンラインのメリットを生かした様々な試みで盛り上がりを見せています。
オンライン展示会のメリット
展示会をオンラインで開催するとどのようなメリットがあるのか、具体的に見てみましょう。
1. 開催コストを抑えられる
オフラインで展示会を開催する場合、会場費、備品・設備代、物品の運搬費、ポスターやパンフレットの印刷代など多大なコストがかかります。
また、スタッフの人件費、交通費・宿泊費がかかるだけではなく、準備期間から当日まで拘束されることになり、展示会開催中は通常業務の効率低下が避けられません。
オンライン展示会では物理的なセッティングが不要のため、物品購入や人の移動にかかる経費はほぼ不要となります。
さらに、展示会中もオフィスからリモートで対応できるので、接客時以外は通常業務と並行して行うことができ効率的です。
2. 幅広く集客できる
従来のオフライン展示会では、来場者は交通費や出張費の負担が発生するため、遠方からの集客が困難でした。
また、近くから来場する場合でも、会場への移動時間を考慮すると、ひとつの展示会のために数時間から丸一日を割かなければならず、スケジュールの都合から参加を断念せざるを得ないこともありました。
オンライン展示会はネットワーク環境さえあればどこからでも参加できるため、地理的なハードルはなくなります。
オフィスにいながら展示会にアクセスでき、いつでも中断可能。スケジュール上外出が難しい場合でも、ちょっとした空き時間を利用して展示会に参加できるようになりました。
出展側としても、一度の展示会で全国から集客できるため、各地で複数回開催する必要がなくなったメリットは大きいといえます。
また、悪天候で出足が鈍ることもなく、安定した集客が見込める強みがあります。
3. 来場者データの取得・分析が可能になる
従来のオフライン展示会で来場者のリストを作成するには、名刺やアンケートの手入力や集計作業が必要でした。
オンライン展示会では、来場者データはシステムで収集し、リアルタイムでデータ化できるため、展示会後の迅速なフォローが可能になりました。
属性情報だけではなく、滞在時間や行動履歴、ページアクセスを分析することもできます。
これらのデータはリードの獲得だけではなく、マーケティング施策にも役立ちます。
4. 商談への移行が容易
オンライン展示会では出展企業と来場者がいつでもつながることができるよう、チャットツールやビデオ通話などのコミュニケーション手段が充実しています。
専用の商談ルームや会議室が用意されているプラットフォームもあり、顧客の購買意欲が高まっているタイミングを逃さず商談を開始できます。
また、出展者もオフィスから参加のため、対応が集中する時間帯には応援を頼むなど人員の調整が利きやすく、売り逃し・取りこぼしを防ぎます。
オンライン展示会のデメリット
オフラインに比べて気軽に出展できる一方、オンラインならではの不得意分野やユーザー特性があることも覚えておかねばなりません。
出展を決める前に、オンライン展示会のデメリットについても確認しておきましょう。
1. プラットフォーム構築のコストがかかる
オフライン展示会に比べて大幅なコスト削減が期待されるオンライン展示会ですが、コストがゼロになるわけではありません。
利用するプラットフォームにより異なりますが、特に初回はコンテンツを1から準備することになるため、ある程度のコストは見込んでおく必要があります。
一方、オフライン展示会では印刷物や装飾品の再利用ができないことがありますが、オンライン展示会のコンテンツは一度作ってしまえば使い回せるものも多く、展示会を繰り返し行う場合には1回あたりのコストはかなり抑えられることになります。
2. 業種により向き不向きがある
オンライン展示会では画像や動画による商品紹介から、VRや3Dのリアルな体験まで可能で、視覚から受ける情報量は申し分ないと言えます。
しかし、実際に商品を触ってもらったり、味わってもらったりすることはできません。
食品や化粧品など、味覚・嗅覚・触覚が決め手となる商品の魅力をオンラインだけで伝えることは難しいため、サンプルを郵送したり、オンラインとオフラインのハイブリッド開催にするなどの他の手段でフォローする必要があります。
3. 滞在時間が短い
オンライン展示会はインターネットでアクセスすればいつでも手軽に入場できる反面、離脱が早いという弱点があります。
オフライン展示会では半日から1日かけて場内を回るため、目的外でも気になったブースに寄り道することが可能ですが、オンラインでは目的のブースに直行・直帰で終わることも少なくありません。
本命でもコンテンツに魅力がない場合、途中で離脱されてしまうこともありえます。
オンラインでは、リアル展示会以上に来場者の目に留まるコンテンツの見せ方や、飽きられない工夫が必要不可欠です。
4. フィードバックを得にくい
営業活動を行う上での最大の懸念点は、来場者の顔が見えないことではないでしょうか。
相手の様子がわからないと、こちらからの声かけも難しいため、商談に至らなかった来場者とは一切のコミュニケーションがないまま終わってしまうこともあります。
来場者データを活用した事後フォローなど、展示会を離れた後も積極的に顧客とコンタクトを取ることが重要になります。
オンライン展示会の開催方法
オンライン展示会には、複数企業が合同で出展する展示会と、企業が単独で開催する展示会があります。
開催準備から運営までをすべて請け負う代行サービスも提供されており、展示会が初めてでも出展しやすい環境が整っています。
合同型オンライン展示会
他社が主催する展示会に出展企業として参加する方法です。
プラットフォームの準備は主催企業が行うため、手軽に出展できるのが魅力で、初めてオンライン展示会を開催する場合におすすめの方法です。
参加企業が多ければ多いほど多数の集客を見込むことができ、自社を知らない来場者にも認知されるチャンスがあります。
一方で、開催日時や展示方法、テーマなどに制約があるため、自由度は低めです。
また、競合企業に埋もれてしまわないようにコンテンツの差別化は必須といえるでしょう。
単独型オンライン展示会
自社が単独でオンライン展示会を行う方法です。
企画立案から運営まで自社で行うため自由に構築でき、顧客が他社に流れる心配もありません。
ただし、単独開催するにはノウハウが必要となり、相応の手間や費用がかかります。
また、自社のみで集客を行うため、広く認知されるには効果的な宣伝方法を工夫しなければなりません。
オンライン展示会代行サービス
オンライン展示会の開催をまるごと代行サービスに依頼する方法もあります。
企画からコンテンツ制作・技術支援・広告・集客・当日の運営まで任せることができるため、ノウハウやリソース不足が原因でオンライン展示会出展を躊躇している企業にとって強い味方となります。
外注費用はかかりますが、自社のスタッフが営業に専念することができるメリットは大きいといえるでしょう。
オンライン展示会プラットフォームでできること
オフライン展示会のメインコンテンツである「講演」「展示」「商談」「資料配布」は、オンライン展示会で十分再現することが可能です。
オンライン展示会プラットフォームの機能や外部ツールの連携を利用した、コンテンツの作成方法や活用方法を紹介します。
セミナー・講演
展示会で行われる基調講演には、Web会議ツールやウェビナーツールを使用します。
オンライン展示会プラットフォームには専用のウェビナーツールが含まれていたり、Zoomなどの外部ツールと連携してのウェビナー配信に対応しています。
オンラインでは会場のキャパシティを気にすることなく集客できる上に、遠方の講師やパネリストのリモート参加も可能なため、コンテンツの可能性も広がります。
セミナーをライブ配信する場合は、質疑応答など来場者と双方向コミュニケーションが取れるものがおすすめです。
また、レコーディング機能があればセミナー動画を後日配布したり、次の展示会で再利用したりと、セミナーを資産として継続的に活用できるようになります。
展示
オフライン展示会の展示物は、展示会が終了したら撤収してしまうもの。
中には、1回展示しただけで廃棄となってしまうものもあります。
一方、オンライン展示会での展示物は、動画や画像での商品紹介です。
Webサイト上に作成した商品紹介やYoutube動画は何度でも再利用可能。
サイトを残しておけば、展示会開催後も常設のショールームとして機能します。
商談
コミュニケーションツールを利用して、オンライン展示会から商談に即時移行することが可能です。
展示会中の商談では、興味を持ってくれた顧客に対して魅力的な提案ができるよう、顧客の嗜好をつかんだり、相手が興味を持ちそうな資料を揃えておいたりといった準備が肝心。
オンライン展示会プラットフォームのリアルタイムデータ分析は、商談の材料としても役立ちます。
カタログ・資料の配布
オンライン展示会では、カタログや資料の在庫を持つ必要がありません。
ファイル共有ツールから資料を送信できるので、必要な資料をすぐに顧客に届けることができます。
来場者にとっても、大量のカタログを抱えて場内を回る必要がないため、効率的に資料の収集が可能です。
オンライン展示会プラットフォームを選ぶポイント
オンライン展示会を成功させるには、プラットフォーム選びが肝心です。
自社の目的に適合するオンライン展示会プラットフォームを選ぶ際に注目すべきポイントを紹介します。
1. 収容可能人数
オンライン展示会では会場の収容人数を気にする必要はありませんが、システム上の同時接続数には限りがあります。
キャパシティを超えた人数が同時にアクセスすると、システムがダウンしたり、通信に遅延が起きたりする原因になり、展示会の運営に支障をきたしかねません。
このため、見込み来場者数を的確に把握し、開催規模に適したプラットフォームを選択する必要があります。
2. 機能・連携ツール
オンライン展示会に必要な機能は、目的により大きく異なります。
展示を見せる目的であれば、CGのクオリティやブースのデザインを重視したり、3DやVRを使った臨場感のある演出が効果的です。
商談が中心の場合は、コミュニケーションツールが充実したプラットフォームを選びましょう。
プラットフォームのパッケージに含まれていなくても、外部ツールとの連携で実現できることもあります。
特にコミュニケーションツールは商談相手も利用するため、ストレスなく使いこなせるかどうかも重要なポイントです。使い慣れたツールや、普及しているツールとの連携が可能かどうかも合わせて確認してみてください。
3. コストパフォーマンス
オンライン展示会は、物理的な制約を気にせず見た目のインパクトを追求することができてしまいますし、作り込もうと思ったらきりがありません。
ですが、高額の費用をかけて展示会を開催しても、見合った売上が得られなければ本末転倒です。
プラットフォーム選びの際は、利益から逆算して予算を組むのが確実。
安価で始めたい場合や、気軽に試したい場合、いきなりオンライン展示会専用のプラットフォームを契約せず、今お使いのWeb会議ツールやコミュニケーションツールを利用してできることから始めてみてもよいでしょう。
4. 対応デバイス
展示会にアクセスしてもデバイスが非対応で視聴できなければ、来場者を落胆させてしまいます。
来場者の利用環境が異なるため、なるべく多くのデバイスに対応するプラットフォームを選ぶに越したことはありません。
中でも、GoogleChromeなど主要なウェブブラウザからアクセスできるものや、スマホからアクセスできるものがおすすめです。
【大規模向け】おすすめのオンライン展示会プラットフォーム
複数企業での合同展示会や、来場者数千人規模の展示会向けに、ビジュアルイメージも重視した高機能プラットフォームを紹介します。
V-MESSE
出典:https://content.v-messe.jp/info/index.html
凸版印刷が提供するオンライン展示会プラットフォーム。
展示ブースはフル3DCGや360°VR対応で、既存ショールームをバーチャル空間に再現。
バーチャルツアーなどリアリティのある体験も提供できる。
オンライン商談、ウェビナー配信、チャット、アンケート機能などの必要な機能をプラットフォーム上にパッケージ。
さらに、凸版の運営ノウハウを活用し企画・制作などトータル運営サポートも行う。
料金:要問い合わせ
EXPO CLOUD
「顧客リーチ」、「使いやすさ」、「セキュリティ」を兼ね備えたオンライン展示会作成ツール。
デザイン性が高く、豊富なバリエーションの中からブースタイプ・デザイン・カラーのカスタマイズが可能。
管理パネルはマニュアル不要で直感的に操作できるシンプル設計。
チャット、オンライン商談など、顧客リーチ力を高めるコミュニケーションツールを標準搭載。
ブース検索やお気に入り機能など、来場者向け機能も充実。
料金:
Business(自社主催・小中規模) 月額250,000円
Enterprise(自社主催・中大規模) 月額400,000円
(自社主催・オーダーメイド) 要問い合わせ
そのまま展示会
出典:https://www.sovec.net/sonomama/
ウェブブラウザから使える、複数社出展の展示会向けプラットフォーム。
ソニークオリティ3DCGの展示空間はオリジナルカスタマイズにも対応。
来場者データはブースごとにリスト化するため、行動分析に役立てやすい。
競合の来場者制限をする機能も選択可能。
単独企業向けには、展示から営業までをワンストップで行う「そのままショールーム」がある。
料金:
そのまま展示会/そのままショールーム 198万円~
【中・小規模向け】おすすめのオンライン展示会プラットフォーム
中・小規模の展示会開催に最適の、使いやすさやコストパフォーマンスを重視したオンライン展示会プラットフォームを紹介します。
仮想オフィス VoicePing
個別商談向けの会議室と、雑談や交流に適したフロアで構成されるバーチャルオフィスツール。
社員以外のユーザーをゲストとして招待でき、仮想空間の自社オフィスでオンライン展示会が開催できる。
会議室は翻訳機能と自動文字起こしで多言語の字幕表示に対応し、海外からの来客も安心。
料金:
・無料プラン 最大10人まで(ゲスト5人) 0円/月
・スモールプラン 最大30人まで(ゲスト15人) 7,500円/月
・プレミアムプラン 最大100人まで(ゲスト50人) 20,000円/月
・エンタープライズプラン 人数無制限 1アカウント500円/月
デジ展
出典: https://www.yrk.co.jp/digten/
ブランディングを専門とする株式会社YRK andが提供する、非接触での商談効果を最大にすることを目的とするプラットフォーム。
シンプルで操作がわかりやすく、初見でも親しみやすい画面構成が特徴。
Zoom、teams、skype、Google meetに連携しており、普段使っているツールでの商談が可能。
料金:要問い合わせ
WEB EXPO Master
出典: https://www.systems.nakashima.co.jp/dutiessolution/webexpomaster/
単独でのプライベートフェアから大規模な合同展示会まで対応できるオンライン展示会プラットフォーム。
外部連携が充実しており、ウェビナーはZoom、YouTube、MP4など複数の動画配信ツールに対応、商談はZoomやTeamsに連携可能。
交流用の仮想空間を設定したり、チャットボットで接客を自動化したりとオプションも豊富。
無料トライアルあり。
料金:
初期費用 50,000円
単独 1ブース 月額20,000円(最低利用期間3ヶ月)
DMMオンライン展示会
出典:https://online-event.dmm.com/
ジャンル別の展示会を随時開催しており、出展料無料で参加できる合同型展示会プラットフォーム。
画像や動画などの素材があれば、最短1時間の簡単操作で出展準備が完了。
会期終了後もアーカイブとしてブースを残し、引き続き来場者データを獲得することができる。
料金:要問い合わせ
自社展示会ならは仮想オフィス VoicePingで
「自社のオフィスに顧客を呼んで展示会を開きたい」、「単発的に専用ツールを導入せず、普段使っているツールで商談したい」、「オンライン展示会の構築にコストや時間をかけられない」
そんなニーズを満たしてくれるのが、仮想オフィス「VoicePing」です。
VoicePingは、社員がバーチャル出社する仮想空間のオフィス。ゲストの招待が可能だから、自社での展示会や商談に最適です。
多機能な会議室には、画面共有、自動文字起こし、多言語対応、録画機能もすべて標準搭載。
フロアではアバターを近づけると会話がスタート。アバターから一定距離内の会話も拾うので、リアルに匹敵する距離感での「声かけ」「雑談」も可能です。
普段は社員がバーチャル出社するオフィスとして使えるから、展示会期間以外も無駄になりません。
オンライン展示会専用のツールにコストをかけず、仮想空間の自社オフィスで展示会を開催してみませんか。